| ○リズムライン&メロディとハーモニー
店に来たら、いきなり「おいっ、ちょっとワシの練習見てくれ。」と言われ、スタジオに入った。
今度、師匠が少林寺拳法の記念式典で演奏する曲をチェックしてくれ、ということだった。
九里さんのレッスンは何度もあるが、九里さん自身の練習を見たことは確か初めてだったかも?胸がドキドキ。
いきなり始まったが、どうも乗ってない様子。
モニターの音が良く聞こえてないようだ。
師匠はしきりに「年言ったら耳遠いげんて、聞こえにくいげんて。」と言っている。
いつもなら物言わせずドカンと叩くのを見ているから、『えぇ、なんでやろ…。』と思った。
が、イントロの出だしを1,2回チェックしてからというものは、段々段々流れがハッキリしてきた。
これだけの差を感じると、やはりライブ演奏、というより、人に見せる時のテンションの大切さを強く感じる。
いつも見ているライブの演奏と、リハーサルでのアプローチ、考え方、調整の仕方、が違うのだ。
まずは舐める様にやりながら、ポイントを整理しながら組み立てていくようだ。
最初はいきなり完成させないで、曲と話をしながら、自分の意見を刷り込んで行くようなものかな?
最初は「これは曲が聞こえるようになったからなのかな?」と思った。
しかし、じっくりと見てみると、少し違うように思えてきた。
自分の勘違いかもしれないが、曲が聴こえてきたのではなく、しっかりと自分のテンポを持って演奏しているように見えた。
自分のテンポをもって演奏しているように思う理由としては、一つは感覚的に“なくとなく”思った(ぉいぉい)、もう一つは、ドラムは激しい演奏をするとスピーカーからの音が聞こえずらくなることだ。
九里さんの演奏を見ていると、曲中で演奏が激しくなっている部分でも、しっかりとテンポを保って演奏をしていて、曲の激しい部分が終わって静かな所に切り替わる時でも、ビシッと決まる。
まったくCDの音を聞いていないといわけでもないだろうし、と言ってCDの音がしっかり聞こえているわけでもないだろう。
その中でも聞こえてくる微かな音に耳を傾け、それによって自分のテンポを取っているのだと思う。
九里さんのテンポキープの頑丈さを見せ付けられてしまった。基本的なことだが、簡単にはできない大切な技術である。
とかなんとか言っているけど、実際はただ単に、自分の耳が悪いだけで、九里さんはしっかりCDが聞こえていたのかもしれない(汗)。
次に印象的だったのが、音である。
今更言うまでもないが九里さんの音は良い。
とても良い。
すこぶる良い。
さきほど、テンションの違いで雰囲気が変わる、と書いたが、そんな中でも九里さんの音は変わらずにしっかりとしていた。
どんな音でも、ハッキリとしており、抜ける音がでる。
存在感がしっかりあるのだ。
低音になっても音がぼやけることがなく、しっかりとしている。
低音については以前九里さんに言われたことがあるのだが、低音になるほど音が出難いのでしっかりと叩く必要がある、これがポイントである。
当然九里さんのストロークは低音でもしっかりと振っている。
このような所に注意することが、存在感のある音を出すためのポイントなのだろうと思う。
音と言えば、グリップもポイントだろう。
九里さんのグリップを見てみよう。
支点の部分は、スティックの握るというよりかは、摘むような感じ、それもスティック全体というよりかは、芯の部分だけを摘むような風に見える。
全体的に見ると、軽く指で包み込むように見えた。
最後に曲との関係について。
曲とのからみを見ると、メロディにピッタリ合わせて叩くところが印象的であった。
バックとして曲を支えるだけでなく、メロディと合わせることによって、ドラムが少し前に出てくる感じがある。
ドラムはリズム楽器と思うか、メロディ楽器と思うか、人によって様々だが、叩き方によっては様々な音がでる楽器には変わりない。
九里さんの演奏を聴いていると、どちらかというと、メロディ楽器的に感じる。
ドラムを聴いているとメロディが浮かんでくるのだ。
これは技術が必要となることなのだろうが、技術だけでなく、どう思って叩くかを感じて叩くということが必要なのではないだろうか。
九里さんのように、ドラムで曲のメロディと絡めるのはとても面白いと感じた。
○楽曲について
曲目は、スペインであるが、1992年にGRPオールスターズが一度しか演奏しなかったバージョン。
スイング・モザンビーク・サルサ・ソンゴと言った、フュージョンに代表する、リズムのエッセンスが各パートにちりばめられたダイヤモンドのような曲である。
このような曲は特別にその時代にしかない、音楽の味付けを見事なアレンジで連動させたものである。
ただし演奏家としては、それをも吸収しながら自分の手法を用いることが大事。
それができるかできないかでは、うまいかへたではなく、音楽自身が深いか浅いかに関ってくる、そういうやり方を勉強してやるのが大切だと思う。
この曲だけでも、年号的にアレンジを全て勉強するのも良し。
師匠はずっとそれを全部やってきた。
完全コピー譜もある、しかし、これはまったく無意味なものだ。
自分で感じてバンドというなかで、自分の息吹きを発することが非常に大切。
そのために日々精進、うまい下手ではない、楽曲の懐を聴け。
これは少林寺拳法と一緒だ。
科目表の奥を覗け。
|